X105  " Liger "
―マルチマテリアルの交配種―




先代のX101は、初の自社(?)設計モデルながらも公式競技において十分な戦果を上げてきた。しかし、設計上の無理がたたり製作は難航、結果として仕上がりに満足のいかない部分が残ることとなった。
また、本機の製作開始と前後して"日本ゴム銃・オブ・ザ・イヤー2015"の開催が発表され、本機のエントリーが内定した。
コンテストに応募するからには当然、機能・デザイン性・インパクトを兼ね備えることが求められる。
以上のような経緯から本機には、あらゆる面で先代を凌駕するという使命が課せられたのであった。

このような高い要求に対しどのような答えが示されたのか。
その全貌が明かされる―





・要求性能

機能面
・先代を上回る高い射撃精度
・光軸調整の可能なレーザーサイトの搭載
・電源にはコストの安い市販乾電池を使用
・手に馴染むグリップの形状
・機関部に接しない配線

その他
・競技の相棒となるにふさわしい高いデザイン性
・製作上無理のないパーツ設計
・コンテスト参加を視野に入れた装飾
・マガジン式電池ボックスのさらなる進化


・諸元概要

型式番号 FCW-X105
コードネーム Liger
方式 瞬間解放式
装弾数 1
銃身長 275mm
全長 335mm
全高 116mm
全備重量 618g
素材 アルミ、真鍮、カーボン、ステンレス、アクリル、MDFほか
照準器 レーザーサイト(緑)
電源 単四乾電池×2
ロールアウト 2015年9月
製作期間 3か月半


・各部詳細


まず、本機のコンセプトの1つが"マルチマテリアル"である。

A aluminium アルミ
B brass 真鍮
C carbon カーボン
S stainless steel ステンレス

中でも特にこれらの材料を"素材のABCS"と呼んでいる。
これらの素材を使い分けることで、機能面・外見ともに高いレベルにまとまっている。


今回も3D CADを使用して設計を行った。
複雑なパーツ構成は、この画面上での微調整によって実現されている。

先代のX101と比較すると、一つ一つのパーツ形状が単純化されているのがわかる。
機関部はX101と同様にスライドを介した瞬間開放式を採用。トリガーはステンレス製、スライドとフックは真鍮製で、フックの先端を薄く削り込むことで射撃精度を高めている。
また、トリガーの半引きでレーザーが照射される点も同様。


レーザーサイトには、フィルターをかませることでポイントが十字になっている点にも注目だ。(下写真)
サイドパネルを外すと、本機がX101の血筋であることがよくわかる。


写真では一部しか見えていないが、光軸調整は2枚の鏡によって行われている。
レーザーモジュール自体は固定されており、一枚目の鏡で上下方向、そして二枚目の鏡で左右方向の角度を調整する。
鏡の設置位置など、詳細は上の図面をご覧いただきたい。


また、フロントパネルは、航空機材料等に使用されるドライカーボン製である。
実はコレ、もとになる板を焼き上げるのに8時間を要する。
X105を解体した写真。組み立てれば見えなくなる部品まできっちりと仕上げられている。
また、外見の割にかなり部品数が多いことがわかるだろう。ネジや電装部品など細かいものまで含めると部品数は200に迫る。
圧倒的な部品数は本機がいかに高度なプロダクトであるかを物語っているといえる。
グリップは従来通りMDF削り出しであるが、切削技術の進歩と塗装によって馴染み・見た目ともに過去最高の仕上がりとなっている。(当社?従来比)

メインスイッチはグリップ左下方に配置されている。
照光式スイッチを採用しているため、起動時は緑色に発光する。

マガジン式の電池ボックスも継承しているが、ロック機構をマガジン側に移設。
アンダーガードを前方にスライドさせるというよりプレイバリューの高い方式に進化している。

アンダーガードはS,B,A,B,A,B,Sの7層構造。電池ボックスだけで126gという重量があり、重心バランスを整えている。
トリガーガード前方には隠しスイッチが仕込まれている。カバーを開きONにすることで電飾が点灯する。

ちなみにグリップから本体両側を走っているメッシュパイプ内部には銅線が通っているのだが、左側がレーザー用、右側が電飾用と系統が分かれているためメインスイッチを入れなくても電飾を点灯することが可能となっている。
"日本ゴム銃・オブ・ザ・イヤー2015"に向けて青色LEDによる電飾を装備。

銃身上面の隙間とトリガーガードの隙間にそれぞれチップLEDを、銃身両側面にそれぞれ3mm LEDを設置し、計4灯となっている。

銃身側面には、カーボンクロスを張り付けたアクリルが使用されており、LEDの光をよく通しつつカーボンの模様を美しく浮かび上がらせる。
可動部を展開させた写真。ゴム銃は本来トリガーやフックが動けば十分であるが、電池ボックスやスイッチカバーが可動式となっている。
やはり可動は男のロマンであるw







下の2枚の写真では、丁寧に仕上げられた断面に注目してほしい。


・デザインについて
本機のデザインは、結果としてZumA2氏の"グリフォンmk-II"に似たものになってしまったことにまず言及しなくてはならない。
ベースであるX101がもともとグリフォンシリーズを参考にしているため、ある程度は仕方がないだろうが、銃身に使用した形材とグリップ横のスイッチがさらに印象を近づけてしまった。

言い訳がましくもあるが、その経緯を語るとしよう。
照光式スイッチ 銃身内部や先端、後方など様々な場所を検討したが、スイッチの背が高く収まりが悪いため、結局この位置に落ち着いた。
銃身形材 ZumA2氏ご本人より譲り受けたもの。
"ベルクートmk-II"などに使用されているもので、厳密には"グリフォンmk-II"のそれとは異なる。
同じアルミチャンネル材を使用しつつ、いかにX101との差別化を図るか考えた結果採用に至った。

これらの要素を取り除いて見ていただけば、下記のように設計者のこだわりを感じ取っていただけるのではないかと期待している。


続いて本機独自の部分について解説していく。
・モーターの鉄芯を利用したフック両側の飾り板
・多層化してスリットを作ったトリガーガード
・両側に隙間を設け、微妙に見えるようになったフックテール
・獣の爪と牙をイメージしたアンダーガードとトリガーガード飾り


このような点から、戦闘機におけるF-16とF-2のような"パッと見以外は全部違う"ものに仕上がったと作者は思っていたのだが、世間はそんなに甘くはなかったようだ・・・。

―初陣にて―
少年「あっ、これネットで見たことある!」
作者「えっと―・・・ それは似てるけど別物だね・・・ (これ今回初登場ですから!)」

この事件は作者的に結構応えたのであったが、この解説ページによって違いが伝わることを願うほかない。


・ライガーとは―
ライオンの父とトラの母をもつ交配種。巷ではゾイドの主役機として有名なのではないだろうか。
本機が上記の通りマルチマテリアルであること、また作者自身が中学・高校・大学それぞれのクラブ活動において身につけた技術を統合して製作されたことから、交配種の代表格であるライガーの名を冠した。
また、ライガーは倫理上の問題から現在では滅多に作成されなくなっているという状況もワンオフ機にふさわしいと判断された。





・あとがき
本機は初陣でも上々な戦果を上げたが、その重量ゆえ午後には腕が痛くなるという事態が発生、射手自身の性能強化が必要であることが発覚した。
また、銃自身が高い射撃精度を誇るため、"トリガーを引く瞬間のブレ"という射手の新たな課題も浮き彫りとなった。

現時点では銃の性能に射手が追い付いていないが、今後は射手の訓練次第でさらなる戦果を上げることだろう。
X105 "Liger"