203  " Fitch "
―ルーキー向けの狩猟用イタチ―




日本ゴム銃射撃協会の競技会においては、大抵の場合賞品が用意されている。
その一方で、参加費は会場代程度しか集めていない場合が多い。
では賞品はどこから出ているのか。答えは会員からの善意による提供、つまりは寄付のようなものである。

きつね自身もいろいろと頂いてきたわけだが、当然いつまでもお客様というわけにもいかない。
そこで賞品提供用に開発されたのが本機である。


量産型のイタチはそれぞれのオーナーの元へと旅立っていく―


・開発にあたって
せっかく賞品提供するのだから、人気が出たほうが提供のし甲斐があるというものだ。
そのためには当然、参加者が「欲しい」と思えるものにする必要がある。
競技会の表彰において一番に賞品を選ぶことができるのは、初参加者の中で最も成績の良かった新人賞とするのが通例となっている。
そこで、本機の開発は新人賞を想定して行った。

新人賞を取るような優秀な人材であれば、今後も競技会に参加してくれる可能性が高い。
そこで、次回から使える競技用銃というコンセプトが決定した。


以上のことから、長い銃身と瞬間解放式によって命中精度を高め、同時に高い生産性を確保する設計を行った。


・諸元概要

型式番号 FCW-203
コードネーム Fitch
方式 瞬間解放式
装弾数 1
銃身長 270mm
全長 340mm
全高 130mm
全備重量 270g
素材 アルミ、MDF
照準器 -
ロールアウト 2015年1月


・各部詳細

量産機のため、本体はすべてアルミ製。


機関部構造はトリガーが直接フックを押さえるシンプルな瞬間解放式。

部品数を減らしつつ、競技にも使える命中精度を実現している。
1号機、2号機は試作機のためX203となる。

制式採用となった3号機以降とは、微妙に仕様が異なる。



写真左側が2号機、右側が3号機。

違いは、肉抜き穴の位置、トリガー周辺のフレーム形状、そしてフックの肉抜きである。
特別な照準器は備えていないため、銃先端とフック頂点を結ぶ射撃基準線を使用する。

射撃基準線はあくまで基準なので、着弾点との誤差を考慮して狙う必要があるが、
本機においては偶然その誤差がほとんどなく、ルーキーにも扱いやすい仕様となった。

ただし、片掛けをすると若干左右にずれるので、平掛けのほうが狙いやすいかもしれない。




FSの標的でもきちんと命中を確認したので、おそらく競技でも十分活躍できるだろう。
量産に当たっては、時間のある時に機関部やトリガーガードなど手間のかかる部品を製作しておき、必要な時に残りの部品を生産する運びとなっている。







また、量産すると並べて楽しむことができる。
5号機は贈答用のカスタム仕様。


フレームにステンカラー、機関部に黒の色つき材を使用。

また、トリガーのラウンド加工や軸まわりの強化など、より実戦的な仕様となっている。

グリップは量産型に見られる隙間を埋め、X105と同様の塗装を施した。


・デザインについて
生産性を高めるためには、部品数や加工箇所を減らす必要があり、その制約の中でデザインする必要があった。

はめ合いの加工は手間がかかるため、トリガーガードは前方のみの片持ち式とし、後方半分はグリップの延長でカバーした。

フレームは微妙に傾斜をつけたデザインとすることで、1パーツ化することに成功。さらに下縁を斜めにカットすることで、シャープな印象を与えている。

各所に肉抜き穴を配置し、デザインの単調化を防いでいる。

グリップはこれまでの研究成果により、できるだけ手に馴染み握りやすい平面形となっている。


・Fitchとは―
Fitchとはケナガイタチのこと。ペットとして飼育されるフェレットもこの一種であるといえば少しはイメージがわくだろうか。

今回は細長い胴体から愛称として採用した。

ちなみにフェレットは兎や鼠の狩りにも使われるそうだ。

この銃が新しいオーナーの元へ行き、愛玩用となるも良し、狩りの供となれば本望である。





・生産状況
生産No. 現状 生産
1 売却 2015/1
2 第14回中部地区ゴム銃射撃大会に提供 2015/8
3 第11回全国ゴム銃射撃大会に提供 2015/8
4 第17回中部地区ゴム銃射撃大会に提供 2016/3
5 相楽製作所に寄贈 2016/3
6 第34回関東地区ゴム銃射撃大会に提供 2016/3
7 第18回中部地区ゴム銃射撃大会に提供 2016/3
8 第12回全国ゴム銃射撃大会in三重に提供予定 2016/3
9 完成 2016/3
10 完成 2016/3

203 "Fitch"